ミカヅキカゲリプレゼンツ

孵化以前ことば 其の壱



古いものほど、下にあります。まるで地層のように。

ページを分けています。
孵化以前ことば其の壱
孵化以前ことば其の弐



[泡(あぶく)]

ほっこりとした
氣持ちになったら
泡(あぶく)のやうな
言葉を綴らう

泡(あぶく)に
その瞬間の眞實を
封じ込めて
しまへるやうに

2010.11.01.


[買ひ物神無月]

君想ひいろいろ服を竝べてはつらつら迷ふ神無月かな

2010.10.16.


[嬉しい甘さ]

わたしは最近なんだか元気で
それは“脳の働きを抑える薬”を減らしてきている所為かも知れない。
本来の活動性や伸びやかさのようなものが戻りつつあると医者は云う。

常に胸の中に笑いがあって、
油断すると笑い出してしまいそう。
懸命に我慢していたら
今は幸せだなと涙が出て来た。

ご飯の前と後に泣けた。
しみじみと今は幸せだなと思って。
あの頃は苦しかったな。

自殺未遂の前は、ほんとうに苦しかった。
苦しくて苦しくてほんとうに死にたかった。
今は四肢麻痺と云う目に見える絶望があるおかげで、楽になった。

涙が口の横を伝ったので舐めてみた。
甘い。
施設のヘルパーさんの言葉を思い出した。
「嬉し涙は甘いんだって。」
ほんとだ。

幸せの涙は嬉し涙とは、少し違うのかも知れない。
けれど、少なくとも甘かった。

あの頃は苦しかったな。
今は幸せだな。

2010.10.16.


[僕は螺旋になる。]

透き通った躰でももっていれば
きっとよかった
それは哀しく美しくて
僕はまだ慰められただろう

透き通った躰でももっていれば
きっとよかった
いっそ本当に誰にも見えないなら
諦めることも赦されただろう

だけどこの姿に
この声に
気づくひとが居た

そんな貴方に
僕はどう応えられる?

僕の姿は誰にも見えない
僕の言葉も
僕の歌も
独り震える闇の中で
ひらひらと舞い上がって
くるくると旋回しては
ただ徒らに降り積もる

その欠片に取り囲まれ
禁じられた調べを
何度も何度も空に放つ
旋律はあまりに脆く
儚く螺旋を描きながらすぐに堕ちるから
せめてそれを僕だけは見つめていようと
眸を凝らして闇を取り込む

その螺旋の残像
眸の中にしかない一瞬の幻
僕は虚しく
残像ばかりを量産する

そしてその度に
何とかそれを自分だけは知っておこうと
自分だけは残しておこうと
あんまりに息を潜めて
あんまりに眸を凝らす
そうやって闇に同化するので
僕の透過は加速する

僕はどんどん歪んでゆく
美しい貴方
まっすぐで清らかなたましい
貴方を思ってどんなに泣いても
それさえ螺旋のコレクション

届かない手紙
いつかの約束
そうしたものを抱えて
それだけを支えに
いつまでこうしていられるだろう

ねえ可笑しいでしょ
僕はこんなに醜いのに
こんなにも妄執に塗れているのに
なのにまるで
透き通った躰でももっているみたいに
僕の姿も
僕の声も
見えないみたいなんだ

貴方がいつか
僕をまっすぐに見た
あのまなざしが教えてくれたのは
こんな痛み

ねえ可笑しいでしょ
笑い飛ばして欲しい
貴方の声が聞きたいな
あの明るい笑い声
もしくは
叱りつけてもらえたら
またまっすぐに僕を射抜いてくれたら
貴方に僕がまだ見えるのなら
まだ見えるのなら

どんなに汚れても
ばらばらに砕けても
今すぐに飛んでいって
僕は貴方の傍を二度と離れない

もうこんな躰は捨てたっていいんだ

それでも貴方に僕が見えるなら
もうこんな躰は捨てたってかまわないんだ

こんな日々があったんだと
こんな想いがあったんだと
届かずに書き溜めた手紙とともに
貴方に打ち明けられる日が
そうしてふたりで笑い飛ばせる日が
いつか来るのだと

もうその頃には僕は僕ぢゃなくなってて
世界だって滅んでるかもしれないし
記憶とか
そんな確かなものは何も残ってなくて
それこそ
残像でしかないかもしれないけれど

それでも
一緒にそれを眺められる日が
いつかは来るのだと
いつかというのは
信じてさえ居れば永遠に来ない日ではないのだと

嗚呼どうか
いつかこの手紙を見つけたら
僕の愚かさを笑って
そんな信仰に縋るしかないんだ

これが貴方の口から出ていれば
現実になりえただろうに
矮小な僕の願いぢゃ
今はただ螺旋の残像
僕の眸の中に虚しく降り積もるだけの
螺旋の残像

透き通った躰でももっていれば
いっそよかった
今すぐに
貴方の元に飛んでいく

透き通った躰でももっていれば
きっとよかった
この躰を
ほかのすべてを諦めてもいいから

本当にはじめからそうだったんなら
貴方だって
僕を赦してくれるだろうから

そしたら
貴方のところに飛んでいく

そしたら
もう決して離れない

僕は螺旋になる

19:18 2006/07/19ミカヅキカゲリ
(自殺未遂の前に書いたものを掘り起こしたので載せておきます。)


[絶望の刻印]

施設で隣の席の人から「何で自殺未遂したの?」と訊かれた。
「だって、苦しかったのだもの。」
「苦しかったら、何してもいいと?」
「だって、苦しかったのだもの。」
それしか云えない。
わたしはもう一度繰り返す。
「だって、苦しかったのだもの。」

あの頃に較べて楽になったと思う。
いろんなことがシンプルになったと云うか。
躰は動かせなくなって不便なことも多いけれど
楽になっていると思う。

「だって、苦しかったのだもの。」
わたしはあの頃、きっと絶望していた。
今はきっと絶望が形になったから楽になったのだと思う。
動かない躰と云う絶望の形。

絶望の刻印。
あの頃のわたしは絶望していた。
理由もなく死にたかった。
わけもなく闇雲に、苦しかった。
生きていけないと云う気ばかりしていた。

今は目に見える絶望がある。
躰が動かないのだ。
わたしが今、絶望していたとしても、
今なら傍目にも納得してもらえると思う。
「いろんなことがシンプルになった」と云うのは例えばそう云うこと。

絶望の刻印。
絶望が形になったことでわたしは安心できたのだと思う。
わたしは絶望しているから絶望の形が必要なのだ。

2010.09.13.


[想いの埋葬]

思い切るべきなのだ

解ってくれないと泣きじゃくる前に
君よ もう

オトナは 個別の事情を慮ることなしに
外聞とか 一般論とかで
君を「解釈」してくる
そんなときは

その人への 親愛の情やなにかを
君よ 思い切ってしまいなさい

この想いは もう
葬り去ってしまおう

ひとつの埋葬をしよう
ささやかなひとつの埋葬を
毀れそうなココロを 今宵護るために

そうして埋めたら
君よ 眠りなさい
卵に還って

やがて 眠りの岸に
ひたひたとなにかがみちて
新しい大丈夫なときがくる

だから 今の想いは埋葬して
君よ 今宵は眠りなさい

2010.05.03.


[認識]

認識がいつもわたしを苦しめる。

わたしの認知。
他人の認知。

そのズレが
些細な曲解や誤解が
容易にわたしを追いつめる。

わたしは
こんなにもたやすく死に引き寄せられてゆく。

2010.05.03.


[あははん♪]

死にたいよあははん♪ なんてメールする。親身に心配して呉れた君

2010.02.14.


[例えばわたしの]

例えばわたしの指が動いたら あなたに触れるのに
例えばわたしの手が動いたら あなたの手を握るのに
例えばわたしの腕が動いたら あなたを抱き締めるのに

例えばわたしが立ち上がれたら あなたの眸を覗き込むのに
例えばわたしの足に力があれば あなたの周りを跳ねまわるのに
例えばわたしが歩けたら あなたと肩を並べて行くのに

だけどわたしは何にも出来ないから じっとしています
わたしは何も出来ないから せめてあなたを想わせて

2010.02.06.


[限界]

生きたくない

死にたいよー。あははん♪
友達にメールしたら
カゲリちゃん、どうしたの?
なんかあった?

あははん♪じゃ、ないよね?

そうだね。
あははん♪じゃないよね。

わたしはもっと自分の人生に真摯な姿勢にならなくてはならない。

2009.12.19.


[お父さんの足音]

お父さんの靴は
歩くたび、
きゅっきゅっきゅっきゅっ、と
まるで赤ちゃんの履くそれのように
心愉しい音がする

きゆっきゅっきゆっきゅっ
近づいて来ると
嬉しくて

きゆっきゅっきゆっきゅっ
遠ざかって行くと
少し寂しい

きゆっきゅっきゆっきゅっ
お父さんの足音
きゆっきゅっきゆっきゅっ


[信仰]

わたしは何の信仰も抱いていないし
何の神も信じていない

わたしにとって それは 例えば 月
  いつもそこに在るもの
弱くて 歪んだ わたしでも
やさしく受け止めて呉れる光

わたしは何の信仰も抱いていないし
何の神も信じていない

わたしにとって それは 例えば 月
 
2009.01.25.


[カーニバルイブ主題歌歌詞。]

「宵闇」

宵闇の中にいて
膝を抱えている
宵闇の中にいて
わたしは闘うことしか 出来ないのだけれど

震える 指先 翳(かざ)す
手の中 溢(あふ)れる ちから

何が正しいのか ねえ 誰か 教えて

わたしには 確かな ちから
それを使うのは 間違いだと云うの
それでも わたしは闘う
この躰(からだ)が燃え尽きても

2008.10.10.


[原爆瓦]
原爆瓦に触った
普段のわたしだったら
もうちょっとそっと手を伸ばしただろう
だけど、わたしは今、首から下が麻痺している
それで、お母さんがわたしの手を持って触らせて呉れた
だけど、遠慮の欠片もない触らせ方だった
こっちの心構えとかには、まるで無頓着に
お母さんはいきなり、わたしの手を原爆瓦に押しつけた
本当に遠慮も躊躇もない触らせ方だったので
わたしはそこから固まった
[美術館の入り口]

美術館の入り口に取り残された
そこでわたしは展示物のふりをしてた
お母さんが帰るまでずっと
わたしは展示物のふりをしていた


2008.08.17.


[涙。]

涙が頬を伝う速度は、どのくらいだろう。
秒速5センチメートル。
これは、桜の花の散る速度。
それよりは、遅いだろう。
涙が頬を伝う速度は、どのくらいだろう。

2008.07.14.


[生きるエネルギー]

時折、すべてを放棄してしまいそうになる
すべてを
食事も摂らず
トイレも垂れ流し

だけど、その度、
わたしの頭の中で、別の声が響く
「駄目だ、それは以可ない
そんなことをしても、余計に惨めになるだけだ、」
だからわたしは、ナースコールを押す
「済みません、トイレに行きたいです、」

ナースコールを押すことは、
生きていこうとする意志の表れだと思う
何回も、
何十回も、
何百回も、
ナースコールを押す内に
生きるエナジーがチャージされて行けばいいな
そして、いつか、
ナースコールなど押さなくても、
生きていけるようになりたい

2008.07.12.


[核心]

核心に 触れないようにさえ していれば 仲良き振りを してられるのに
2008.07.02.


[死体ごっこ。]

久し振りに死体ごっこをした。
首を変な方向に動かして。
昔は手足もあらぬ方向に曲げていた。
今は首しか動かない。
眸(め)を開いて、虚空を見詰め、
息も止めてみる。
生きてるって実感する。

2008.07.01.


[大人。]

僕は卵の中に閉じこめられている

昔、僕は自由に歌えた
歌は僕の翼だった
今はくぐもったような変な声しか出ない

昔、僕は自由に演じられた
言葉は僕の武器
だけど、今ぢゃ手足が動かない

こうなっても、まだ書く力が残ってるからいいやと思っていた
けれど、ろくに下調べも出来ないで、何が書けるだろうか
こんな風にあらゆることを諦めることが大人になると云うことなら
それは、それは、恐ろしい

2008.06.29.


[生きる]

こうなって それでも まだまだ生きている 家族の愛に 支えられつつ。

2008.06.26.


[鳥篭短歌]

鳥篭に 閉じ込められても 囀るわ 亡き人のため 尽きぬ想いを
2008.06.19.


[作詞ルーデシア]

チューブに繋がれた 哀しい躰(からだ)
すべてを失っても 時は戻らない

何もかもが幸せの道だと信じてたのに

たとえこの躰朽ちてても わたしは神にさえなれる
たとえこの命尽きてても わたしの眸(め)を見詰めていて

2008.05.22.


[入院日記]

放置。
絶え間ない放置が
わたしの日常。

誰も訪う者のいない、この部屋で
じっと
じっとしてゐる

2007.03.15.

[自殺日記]

わたしは遺棄されている。
あの日、わたしによって遺棄された躰。
あの日、わたしによって遺棄された心は
未だ養い手を知らず
遺棄され続けている。

2007.02.09.