ミカヅキカゲリプレゼンツ

孵化以前ことば 其の弐



古いものほど、下にあります。まるで地層のように。

ページを分けています。
孵化以前ことば其の壱
孵化以前ことば其の弐





[去勢された女の子]

内側で殺戮するようになった。

見た目はますます可愛らしく。
女の子らしく。
人畜無害になって。

その代わり。
内側で殺戮するようになった。
凶暴さを内側に秘めて、殺戮を繰り返すようになった。

この前も、祭りの後に、
バスの中でうるさすぎる中学生たちを内側で殺戮した。

毒ガスなら簡単だけどつまんない。
これだけ混んでいたら刃物を振り翳せない。
超能力かな、鎌鼬(かまいたち)みたいに奴らの頸(くび)を刎ねて行こう。

わたしには、言語障害がある。
わたしの発言は聞き取ってもらえないことが多い。

そうした経験を積み重ねるうちに、
発言よりは沈黙を、
沈黙よりは受容を、
わたしは選択するようになった。

去勢されたわけだ。

東京に住んでいた。
その頃、苦手だと思っていた人に会ったけれど、
会話は滑らかに進んだ。
わたしは終始、微笑んでいた。
その人は悦んでいた。
わたしが成長したと云って。

介助者も「善いことだと思いますよ、」と云う。
「ひとり暮らしをはじめて、いろんなヘルパーさんと関わるようになったからぢゃないですか?」

だけど。
微笑みながら、わたしは哀しかった。
かつて、わたしの中に確かに存在した「烈しい女の子」がもういないのだと知って。

わがままでないことが何より求められるのが、
障害者だと思う。

社会の中で生きて行くためには、
障害者はわがままになれない。

哀しい習い性。
去勢された女の子。

それでも。
ひとり暮らしをはじめる前より、意思を持つようになった。

哀しい習い性から、
少しは脱却できたのだと信じたい。

そして。
これからの暮らしを送って行くうちに、
少しでも、あの「烈しい女の子」が還ってくると信じたい。

哀しみに暮れているあいだに、夜明けが近い。
今できることは、去勢されてしまった女の子を弔うことよりも、
明日を恙なく暮らすことだ。

その暮らしの繰り返しの果てに
ほんとうの自由が待っていると信じることだ。
信じて、明日を恙なく暮らすこと。

まだ弔わない。
取り戻してみせる。

わたしは自分に約束をする。
目指すのは革命。
人類全体の向上(ベースアップ)。

そのためにもまず、わたしは去勢から脱却しなければ。

内側で殺戮するのを、
少しは外に出してみても良いかも知れない。

2013.08.19.


[どこにも]

ひかるライトに ひかるシンゴウ わたしなら どこへもゆける けれどどこにも

ゆけぬ気がしてたちすくむ夜だから わたしの味方は爆音音楽

チャイコフスキーをイヤホンにして爆音で聴く
深海にいる心持ちになろうと云う作戦

爆音の中 宇宙遊泳するみたいにして 文字パネルの上を彷徨う
文字が紡がれて行く

文字が主張するのは わたしの存在
存在を確かにするために わたしは言葉を綴る

聴覚だけが酷くリアルに わたしを奪う

チャイコフスキーをイヤホンにして 集中しようとする
夕食もなんとか食べたけれど 未消化のまま吐き出してしまう

ダメージを受けている

何に?

仮令(たとえ)ば
西鉄の運転手の対応が酷かった
世間に出ると云うことに わたしはダメージを受けてしまう

どこへもゆけるのに 車椅子はどこへもゆけるのに
どこにも辿り着けないような 心許ない心持ち

夕食時には噛む音が 今は介助者が動く気配が
イヤホンの爆音の隙間から伝わってきて わたしを頼りなくか弱きものにする
介助者にもうまく指示できなくなっていて わたしは泣いた
「大丈夫ですよ、ゆっくりで。」 介助者が云ってくれる

こんな夜 遥かな女の子を想う
遥かな女の子 遥か昔のわたしのことを考える

あの頃 まだ四肢麻痺ではなかったのに わたしは既に絶望の中にあった
あの頃から較べたら 「なんでもないはず」だと思う
わたしは確かに歩いてきたぢゃないか それどころか もう一度飛び立ちすらした
折れた翼を繕って 空をあきらめないで

だから
これからだって どこにも辿り着けないことなんてないはず
わたしの絶望は 巡り巡ってきっと誰かの栄養になるから
おそれずに
透き通った結晶になる時まで 見つめていよう

大丈夫
わたしはとにかく自由だ 何からも自由だ
わたしには自己選択できる力が残されていて 躰(からだ)は動かないけれど介助者もいてくれる

江國香織の小説に
「抱擁、あるいはライスには塩を」
と云うのがある
中で「自由を!」と同義で 「ライスには塩を」と使われる
それに肖って 施設で暮らしていたころから スローガンにしていたことばがある

曰く
「電動車椅子には指輪を」

施設で暮らしていたころは お洒落をするのにも
それを白眼視する向きがあって アクセサリーなんかもってのほかだった
その頃 施設にわたしを訪ねてはひとり暮らしに挑戦することを支援しはじめてくれていた Gさん(自立生活センターの人)が電動車椅子なのに指輪やピアスをつけていて
わたしにはそれが「自由から吹いてくる風」みたく感じられたものだ
だからスローガンにした 「電動車椅子には指輪を」

少し前に わたしは自分に指輪を買い与えた
始終 つけている
描いていた未来が そこには確かにあって
これでいいのだと わたしを肯定する
わたしは自由だと云って

こんな夜もあるだろう
わたしはもう施設のように護られ 庇護された「囲い」の中に暮らしてはいない
ここは 野生の世界
頼りなくなる夜だって あるだろう
大丈夫

そのくらいでは 「自由から吹いてくる風」は止んだりしない
チャイコフスキーに身を沈めて 眠ってしまおう
朝になれば また空が拡がる
もう一度飛び立てる 空をあきらめずに
わたしは空をあきらめない

2013.07.27.


[はつ夏の]

初夏、と云うことではなくて、はつ夏の花火をした。
ひとり暮らしをはじめて、はじめての夏の花火。

主に経済的理由から、やったことのないロケット花火を、わたしは選んだ。
ロケット花火を選んだのは、主に財政上の理由からだったけど、
それを差し引いてもロケット花火は、
わたしに相応しいものだった。

火をつける。
待つ。
見上げる。
ばああーん。

火をつける。
待つ。
見上げる。
ぱああーん。

何かの儀式のように繰り返した。

火をつける。
待つ。
見上げる。
ぱああーん。

四肢麻痺だからわたしには、手持ち花火は持てない。
だから、ロケット花火は、まったくわたしに相応しかった。

花火は公園でした。
祭りの仕度をするオジサンとお兄さんの中間の人たちがいたので、わたしは訊いた。
「ここで花火をやっても良いですか?」
彼らは請けあってくれた。
「この山車に飛ばないなら構わないよ、」と。

わたしは山車から充分に離れて、ロケット花火をやりはじめた。
彼らはその瞬間、僅かにざわめいた。
まさか、ロケット花火だとは思わなかったのだろう。
可笑しくて、
ロケット花火が愉しくて、
わたしははしゃぐ。

こんなに愉しい。
こんなに愉しい。

宵闇に
常になりつつある微熱が吸い取られて、
わたしはもう酷く「ジャイアント」な心持ち。

この瞬間なら、
ロケット花火を見上げる刹那なら、
この先の人生でもわたしは何かを為せるって、
誰かの勇気になれるって、
信じていられる。

ロケット花火をやり終えて、
僅かながら、強くなれた気がした。
僅かながら、確かになれた気がした。

はつ夏の「リトル・リトル・ジャイアント」な夜。
はつ夏の「リトル・リトル・ジャイアント」な出来事。

はつ夏の「リトル・リトル・ジャイアント」なロケット花火。

2013.07.23.


[振り翳す。]

「振り翳す正しさ、振り翳す明るさに、傷付く人もいると云うことをもっと知っておいてください。」
と書いたことで

ひとを傷付けてしまった。

それはまさに、
わたしが書いたように、
「振り翳す」ことでしかなくて。

わたしは
弱さを
「振り翳した」
のだと思う。

「わたしはこんなにも弱いのだから、
やさしく扱ってよ、
もっと気を遣ってよ、」

自分の拳の先にも
ひとがいた、のだと

愕然とする。

傷付けてしまったことの手応えに
慄然とする。

それは、
鮮やかで、
気持ちが薄ら寒くなる。

ごめんなさい。

わたしはことばに縋る。
何が起きたのか、検証する。
傷付けたことの手応えは、
消えないのだけれど。

ときどき、使い方を誤るのだけど、

「ことばはわたしの武器」なのだから、
「ことばはわたしの翼」なのだから、

弛まずに、
わたしは書こう。

逃げないで、
わたしは書こう。

2013.06.11.


[制御(コントロール)]

発達障害ゆえなのか 判らないのだけど
制御(コントロール)がきかなくなることが 結構ある

顔の筋肉の動かし方が 喋り方が
自分の「らち外」に置かれる感じ

気持ちが汗だくになってくる
落ち着かなくちゃ 落ち着かなくちゃ

けれど
顔や躰(からだ)が震える 呂律が回らない
唾液が出る 口の端から溢れそうになる

おそらくは今日 元気すぎたのだ
ひと騒動あった介助者と久しぶりにうまくやれた
わたしははしゃいでしまって だから今グロッキーなのだ

介助者に足を揉んでもらいながら わたしは書く

少しまえに訊かれた
「物書きとしての"覚悟"はどんなですか?」

やってやろうぢゃないか

さっき どうしたらいいか判らなくなって バナナチップを暴食した
「自棄食いですか?」 介助者に訊かれた
「自棄食いです。」 わたしは答えながら もう欲しくないそれを漫然と食べ続けた
そう 漫然と
それからまた パソコンに向かう
自分の状態を視続ける 漫然と

学生のころにも友達とテンションを上げすぎて よくこうなった
ふたりして 安定剤を飲んだりした

戻し方が いまいち判らない
朝が "耀かしい朝"が迫りくる
気持ちが汗だくになって行く
脳がオーバーフロウ気味
どうしよ どうしよう

寝るまえの薬を飲んでみようかな
介助者は煙草を吸いに行っている
戻ってきたら 頼んでみよう
鍵の開く気配がする

さあ。

2013.05.02.


[驕り。]


最近、調子が悪いことについて、相談した。
何がストレスになっているのか、訊かれたので、

> やっぱり友達の死ですかね。。。
> 友達の分もちゃんとしなきゃ、と思っているのだけど、
> なかなか躰がついて行けていませんね。( ̄へ ̄|||) ウーム。
>
> どうすればいいのかな?
> こんなとき、どうします?

と訊いてみた。

+++
どうだろう?

オレは誰かの分まで生きようなんて大それた考えは
したことないな。

第一、友達の分もちゃんとするっていっても
どうすればちゃんとしてるって言えるのかわかんないし。

その人の人生はやっぱりその人の人生。
誰のものでもない。
誰に引き継がれるものでもない。
誰も触れられない。

その人だけのかけがえのない人生。
その人にとってのみ意味ある人生。
どんな生き方だろうとね。

オレはそこを大切にしてあげたいかな。
自分の人生とは違う。別物。

ただ、そう思うと交わったほんの一時は自分の人生の一部でもあるわけよね。

であれば、せめて自分の人生をより素晴らしいものにすることだけが、
せめて自分の人生を否定しないことだけが、
その人の人生を否定しないことに繋がるんかな…とか。

わかんないわ。笑
+++

と云う返事がきた。

うわあ、と思う。
うわあ。

冷水を浴びせかけられたように感じた。

うわあ。
わたし、驕っていたかも知れない。
友達が亡くなったこととわたしが生きて行くことは、
まったく別物。
なんら、関係がない話だ。

友達が作家になる前に、途半ばで倒れたのは、ほんとうだ。
だけど、それを「無念」だと感じるのは、
わたしの独り善がりでしかなくて。

きっとほんとうのところは、
ただ、彼女の「生」があるだけなのだ。

それが、刹那、わたしの「生」と交錯しただけなのだ。

彼女の分までちゃんとしなきゃ、なんて 驕った考えはやめよう。

彼女が亡くなって、わたしは哀しい。
たったそれだけのところに立ち返ってみよう。

彼女の死とは関係ないところで、
わたしは自分の仕事をする。

毎日を恙なく暮らし、そして、書く。

友達が亡くなって、落ち込んでいる。
それでも、歩く。

今はもう月曜日。
朝になれば、発達障害のミーティングだ。
その前か後かに、先生に時間を作ってもらおう。

とりあえず、明日の予定を恙なくこなすところからはじめてみよう。

やがてその地平で、彼女に恥じない生き方になっていればいいな。
でも、それはまた、別の話。

2013.03.11.


[訃報。]

嗚呼
あなたはどこに行ってしまったのでせう。

友達が亡くなったと知らせてもらった。
月曜日の夜更け。
今日は金曜日。

この間、わたしは友達の分までちゃんとしなければ、と
騙し騙しやってきた。

でも、
そろそろ限界。
誤魔化せなくなってきた。
熱も下がらないし、口内炎も4つくらいできているし。

本格的に落ち込んだ方がいいのかな?
だけど、本格的に落ち込むと、抜け出せなくなりそうでこわい。

嗚呼
あなたはどこに行ってしまったのでせう。

同じ夢を抱いていた。
やっぱり作家になりたい人だった。
書くと云うことに
ストイックに向き合う人であった。

資料集めに執筆に、とても頑張っていて、
まだぜんぜん作家ぢゃないのに、
書くことを「仕事」と呼んでいて。

「500枚の新人賞に、まだ半分も行っていないのに、800枚行ってる」
と云っていた。

でも、
そう云うものも無に帰するのだと思うと、
どうしようもない心持ちになる。
やるせなさでいっぱいになってしまう。

嗚呼
あなたはどこに行ってしまったのでせう。

相変わらず、日常は続いて行き、
あなたひとりだけを欠いても、
世界はまわる。

これからもわたしは歩く。
あなたが果たすことのできなかった夢の分まで
引き受ける。

書くことを「仕事」と呼んでいたあなた。
わたしもそろそろ覚悟を決めよう。
書くことを仕事にする。

作家になりたい、ぢゃなく、
作家になること。

嗚呼
あなたはどこに行ってしまったのでせう。

どうか、待っていてください。
いつか、あなたのことも書いてみせるから。
今のあなたが、
苦しみから解き放たれていますように。

2013.03.08.


[検証。]

すれ違った介助者と話し合いを持った。
3時半くらいまで話し合ったけれど、一言でまとめてしまえば、
「徒労」に終わった。

有意義だったと思おうとしてきたけれど、
認めてしまおう。
徒労に終わった。

わたしが信じている方法論では、
「このひとに響かない」のだと思い知らされた。

話し合いに、心的エネルギーを使いすぎて、
わたしは大幅に調子を崩した。
心的エネルギーを使いすぎたからだ、と思っていた。
しかし、一向に快復できない。
熱も下がらない。
気分的にも弱る一方だ。

単純に心的エネルギーが足りなくなっただけではないのではないか。

わたしは自分のココロを疑い出した。
例のように、「心身相関」なんじゃないか。

だから、これは、
わたしのココロを検証するための文章だ。

わたしが信じてきた方法論とは、
「明け透け」であると云うこと。
晒すこと。

自分の過去を
自分のキズを
武器として、「利用」すること。

彼女の方法論は、
「ほんと」を見せない砂上の楼閣に、
「まこと」を築くこと。

方法論の違いが、どこまで行っても平行線で、
「徒労」と云う言葉が頭を掠めた。

認めてしまおう。
ショックだったのだ。

話し合いは徒労に終わったけれど、
彼女とは、これからも介助として付き合って行かなければならない。
いろいろなことをお願いしなければならない。

たわいないことを話そう。
自分のキズではなく。日常の何気ないこと。

そうして、その場限りの話をしよう、たくさん。仲良くなろう。

それしか、思いつかない。
頑張ってみよう。

2013.02.20.


[仕事]

「ミカヅキさんは仕事をどう考えているんですか?」
と訊かれた。

素知らぬ顔をする。
そのひとが云いたいことは判ったけれど。
「作家になります。」

「いや、それはそうでしょうけれど、それまでの間。」
「新人賞に挑戦します。」
「いや、もちろんそうでしょうけど、仕事はしないんですか? どうやって食べて行くんですか?」

わたしは渋々答える。
「年金。」

そのひとは露骨に顔を顰める。
「うわー、そうなんや。」
その声には驚きだけでなく、かなりの非難もこめられていた。

だって。
だって、とわたしは思う。

「わたしはそう云うふうにはできていないのだもの。」

それは、或いは選民思想であり、或いは諦念だ。
働くと云うことに、わたしはおよそ向いていない。
わたしにできることと云ったら、歌うことだけ。
詩を書き、短歌を詠み、歌を作ること。
それは、確かに「働く」ことからは、隔たっている。
そのひとがたぶん思ったように、税金で生きて行くことに、わたしは罪悪感を持つべきなのかも知れない。

友人が昔よく、わたしのことを称して、『アリとキリギリス』のキリギリスのようだと云っていた。

でも、わたしは思うのだ。
「世界には、キリギリスだって必要なはず。」

わたしがやっていることは、
経済的には無価値だ。
だけど、歌のように経済的に無価値なものでも、世界には必要なはず。
働き続けるアリが、一瞬、手を休めて立ち寄る場所としての文化。
その後また日常に戻って行くための勇気に、わたしはなりたいのだ。

ところで、
わたしは障害者だ。
四肢麻痺だし、高機能自閉症と云う発達障害も抱えている。

仮令特性的に働けたとしても、経済的には無価値だ。
現状、税金に頼らなければ、生きて行けない。

ぢゃ、無価値なのか?

そんなことはないはずだとわたしは思う。
世の中にはいろいろな理由から、「ふつう」よりも「弱い」人がいる。
「弱い」人の立場を獲得することで、社会はよりやさしくなれる。
より成熟できる。

だから、障害者はただ生きているだけでもいい。
社会を善くしてゆける。

その前提に立ち、
わたしは敢えて歌っていると云おう。

歌は、わたしにとっての仕事だ。
わたしの歌を通して、わたしは誰かの勇気になりたい。

昨日は節分だった。
今日から春だ。
新たな季節、わたしは弛まず歩いて行こう。
唇には歌をいつも携えて。
働き続けるアリたちが、疲れた時に立ち寄るべき場所を耕そう。
それがわたしの仕事。

2013.02.04.


[ちかちか。]

視界がちかちかする。
うまく笑えない。

介助者に指示を出そうとして、
表情のぎこちなさに愕然とする。
介助者とうまく視線を合わせられない。
何ごとか、回線が滞っている感じ。
下手をすると、涎でも垂れ流しかねない勢い。

こう云う時、
いつも酷くおびえる。
変化が不可逆的なものではないのか。
わたしはこのまま狂ってしまわないのか。
精神が破綻をきたすのではないか。

なんとか落ち着こうとコトバに縋る。

2013.01.27.


[また歩き出すために]

新人賞がダメだった。
まさか引っかかると思っていたわけぢゃないけれど、
いっちょまえに夢は膨らんでいたところだったので、
それに、
自分のぜんぶを注ぎ入れたものだったので、

とてもらくたんした。

でも、
落ち込んでいても夢には近づけないから、
公募情報サイトに行って、また新人賞を探した。

だけど、
まだ取り掛かる元気が出ない。

だから、
いつものようにコトバに縋る。
コトバで折れてもコトバに縋るのだ。

傷つくこともあるだろう。
わたしが昔、声優になりたくてもがいていた時期に詩にしたように、

<磨くことは傷をつけること
 研磨傷が疼く>

ままよ。
施設と云う安全な囲いを棄てて、
「危険に満ちた」野生の世界に飛び出したのだから、
研磨傷は甘んじて受けとめよう。
望むところだ。

これが、
人生。
これが、
挑戦。

望むところだ。

2013.01.06.


[心的エネルギー]

クリスマスイブになった夜更け
いいかげん お風呂に入ろうと思うのに
動けない

介助者は寝ている気配
わたしはだらだら パソコンをやってしまう

お風呂に入るのには
心的エネルギーを要する
お風呂に入るのに三時間くらい掛かるから だ
そして その間ぜんぶ指示を出さなければならないから だ

心的エネルギーを要する
ひとりでパソコンに向かっている方が
どんなにか 楽か知れない

でも
わたしは人生を耕すのではなかったか

楽に流れることは
たやすい

けれど 人生を耕すと云うのは
心的エネルギーを惜しまないことだ
その面倒臭さもまるごと
すべてを引き受けることだ
<生きる>ことだ

心的エネルギーが出ないなら
出せば善い
出すためのコトバを綴ろう

わたしには何もできないけれど
わたしにはコトバがある

わたしにはコトバがあるのだから
コトバに縋ろう

ほら
ストレッチマンとストレッチした時にストレッチパワーがたまってくるように
心的エネルギーがたまってきた

さあ
お風呂に入ろう

2012.12.24.03:33


[そぐうことば]

久しぶりに湯舟に浸かった

てのさきやあしのさきが
『てぶくろおかいに』風に云うと
「ちんちんし」て

それから
だんだんと躰(からだ)がほどけてゆくかんじ

わたしのどきどきが
自分の心音が
ダイレクトに駆け巡る

それは
或いは気持ち悪くて
或いは心地よい感覚

いつもならば
「そぐうコトバ」をさがすのに

ただ
浸かっていた

ただ
感じていた

2012.12.03.


[無題]

その昔、わたしは空を目指した。
けれど、翔べず、この地上に墜ちてしまった。
翼は折れ、わたしは囚われた。空をあきらめかけた。

しかし、折れた翼は繕えることを
空はあきらめなくてもいいことを
わたしは知ってしまった。

だから、わたしは自分の人生を取り戻す。
今度こそ、上ばかり看て足元が覚束なくなるのではなくて、高みを目指しつつ地に足を注げよう。
人生を耕す。わたしはわたしをあきらめない。

2012.10.09.


[超現実]*再録

握っていたはずの切符を探して
微熱がちな手は空を切り、
リアルは高速で彼方へと。

飛び去った身体感覚の後にたったひとつ残った感覚は酷くビビッドで。
それ故に寧ろ祭りの宵。

飛び込んでくるのはもはや色彩のみ。
きみどり
黄色
鮮やかな緋

うすい青
あおみどり
みどりあお
わかくさ
白黒
それはそれは純粋に、色としてのみ存在する。
単なる光の反射。

2003/06/19(木)22:37に書いたもの。
2012.08.12.再録


[決意]

夢ばかり見てきた。
声優。作家。
斜め上方に夢や目標があって、そちらを目指してばかりで、
足元が覚束なかった。

磨くことは傷をつけることでもあり、
研磨傷に呻きながら、
わたしはひとりだった。

東京で月6万の仕送りで暮らしていた。
東京で月6万では、暮らして行けないのだけど、
それを両親に相談することをしなかったくらい、
わたしはお金の管理のような実際的なことは苦手だと云うのを言い訳にして、
具体的な対策はしなかった。

あの日々、
わたしは囲いのない屋上を素足で歩いているようなものだった。
それでも、足元を見ていなかった。
だから、足元に何もないことに気付けなかった。
それで大怪我を負った。
それが、5年前の自殺未遂だ。

あの頃、わたしはひとりぼっちだった。
助けが欲しいと胸を?き毟りたくなるくらい、苦しかった。

そうして、一度わたしの翼は折れた。

でも、今、わたしはもう一度、空を目指そうとしている。
翼を繕おうとしている。

決めていることがある。
自分のこれからをきちんと自分でやって行こうと云うことだ。
足元をきちんと見つめて、人生を耕そうと云うことだ。

そのためには、健康の管理もお金の管理もきちんと自分でできるようにならなければいけないし、なりたい。

そして、何よりも大切なこと。
もうひとりぼっちにならない。
今、相談できる人がいる。
そのありがたみを忘れない。

その上で、時間が多少かかっても良いから、自分で選んできちんと料理したものをきちんと食べて、
人生を着実に愉しみながら、歩いて行きたい。

2012.07.16.


[自分に魔法をかける。]

「自立すること=我慢すること」ではない。
寧ろ、自由になることだとわたしは思っている。
だけど、施設としては「自立=我慢」だと思っているみたいだ。
何かと云うと、「自立するんでしょう。」、「そんなんぢゃ自立できんよ。」と我慢を求められる。

かさかさが降り積もって行く。

「自立に向けて」、早く寝ましょうだの、離床時間を伸ばしましょうだの、 はっきり云って、知ったこっちゃない!
わたしの目指す自立は、
そんなのの延長線上にはない。

だけど、云わない。
大人だから。
嘘。的外れだけど、悪気があるわけではないことは、ちゃんと判っているから、だ。
施設としては、わたしのために考えてやっているから、だ。

でも。

離床時間を伸ばすのはつらすぎるので、
やめたいと云ったけれど、許してもらえなかった。
「わたしの生活だから、好きにしたい。」
「ここで、うちらの手借りんで生きていけると?」
そう云われたら、離床するしかない。

遠回しに「好きにするならうちらは介助しないよ。」と云っているようなものだ。 それは脅しだし、人権侵害だと思う。

かさかさが降り積もって行く。

離床していて、お尻が痛くなったので「座り直させて。」と頼んだら、
「なんでー? そりゃ、お尻も痛くなるよ。自分がずっと座っとうけやん。」と厭な顔された。
好きで座っているのではないのに!

かさかさが降り積もって行く。

昼ご飯を待つあいだ、あんまりつらいのでテーブルに突っ伏していたら、
「そんなにきついならパソコン、控えたら?」と云われた。
つらいのはパソコンぢゃなくて、離床することなのに!

わたしの目指す自立とは、我慢をしないこと。
自分で選んだことを自分の責任においてやること。
自由になること。

自分に魔法をかけよう。
今のかさかさに負けないために。
ひとり暮らしをはじめたら、少なくともこう云うかさかさはなくなるのだから、
今はまだ聞き流すのだ。

大丈夫。
施設がどんな自立を描こうと、遵う必要はない。

時が来れば、
わたしはちゃんと自分の翼で飛び立てるから。
だから、大丈夫。

2012.07.09.


[金太郎飴を目指して]

誰かを傷付けるための言葉は
ただただ垂れ流すための言葉は
容易く出てくる

けれど
「言葉はわたしの翼」なのだから
わたしはもっと
言葉を大切にしよう
言葉を吟味しよう
一言一句 過不足なく使えるように

雑文を書き散らすようなときでも
詩を書くみたいに
小説を書くみたいに
すべての言葉に責任を

わたしが生み出す言葉の
どの一文にも
どの一節を取り出しても
ひとしく そこにわたしが在るように

2012.06.28.


[すみずみまでいっきに]

表に出ると
雨や風が思いの外 激しくて
あんまり暴力的なので

その不穏さに
わたしはすみずみまでいっきに乱されてしまう

その不穏さに
わたしはすみずみまでいっきに満たされてしまう

2012.06.23.


[救ひ]

弟が助けに來て呉れた
混亂してゐるわたしを笑ひ飛ばして お金がないのを整理して呉れた
善かつた お金 なくなつてゐなかつた
弟が救つて呉れた

自立生活センターの人も救ひのメールを呉れた
***
耕すとは、額に汗し、爪に泥が挟まっても、その汚れた手で目に入る汗をぬぐって、
もう一度、鍬を振り上げ、それを足元の土に力いっぱい突きさし続ける。

下を向いて足元の固い土を見つめ続ける。
そんな単調で、だげど、とても疲れる行為です。

一振りごとに鍬が重く感じられる。
足腰が軋む。石のように腰が重く感じられていく。
そんな行為が耕すという行為ですよね。

しかも、ゴールは果てしなく遠い。
そんなもんがあるのかさえ、わからない。
遠くの前方には信じられないほど延々と広大な大地は広がってる。

たった独りで全部やらなきゃならない。

絶望的ですか?

そんなときは手を止めて、腰を伸ばして一休みしてみてください。

視線を上げ、空を見上げてください。

日はまだ高く、どこまでも真っ青に広がる青空が、
時間はまだいくらでもあると、教えてくれるはずです。

人生はレースではない。
スピードや距離を競う必要もない、と。

さわやかに吹き抜ける風が汗を乾かし、のどかな小鳥のさえずりさえ 聞こえてくるかもしれません。

これこそが人生の醍醐味!至福の瞬間ではないですか?

自分が信じられなくなったら、耕してきた道を振り返ってみてください。
「まだ」遠い、ではなく、「もう」こんなにやったんだと誇らしげに思えるはずですよ。

ついでに僕や仲間の姿も見えるはず。
そばにいますよ。
***

嗚呼 わたしはひとりではないのだな

友達も勵まして呉れた
スタッフも怒つて呉れた
「あんなに会いに来てくれるお父さん、いないよ。見捨てられていないと思うよ。」

昨日は自分を立て直す爲に
わたしは言葉を必要とした
だけどその爲に親を傷附けた

ごめんなさいとしか云ひやうがない
でも 自殺未遂の前には
ほんとうに見捨てられたと思つてしまつてゐる

昨日は自殺未遂を図つた頃と何も變つてゐないと思つた
しかし やつぱり少しは變つてゐるんぢやないか
混亂してもそれを言語化できる
それを發信することで救ひの手を差し伸べて貰へる
幸せな状況にある

救ひをきちんと求められゐる いまの状況は
とても惠まれてゐると思ふ

大丈夫
振り返つたら ちやんと耕せてゐる
ちやんと道が出來てゐる

たゆまず進まう

2012.06.17.


[危険水域]

「わたしの内部の圧力が高く 気が触れてしまいそう」

自殺未遂の前は四六時中こんなだったけれど
久方ぶりにそう云う危険水域に
わたしはいま居る

「わたしの内部の圧力が高く 気が触れてしまいそう」

お金が圧倒的に足りない
手助けが必要なのにひとりぼっちで孤独だ

親に電話した
「自分のできることしかできんのぞ そんなに追い詰められるなら白紙に戻してしまえばいいやん」
と云われた

嗚呼 助けてはくれないのだな
そう思った
また見捨てられた
そう感じた

自殺未遂を図って
わたしはとても変わったと思っていた
だけど
変わったのは わたしだけで
わたしを取り巻くものは あの頃のままなんぢゃないか

わたしの親は
娘を自殺に追い込んだ親だ
電話の声を聞きながら 奇妙に醒めた部分が思う
助けてはもらえない

ぢゃあ どうするのか
あきらめてしまえるのか


断固として 否だ

わたしは一度は翼などもう折れてしまったのだと思い込んだ
もう羽ばたくことなどできないと

だけど 折れた翼は繕えることを
空をあきらめなくてもいいことを
わたしは知ってしまった

だから もう戻れない
空を望む
高みを目指す

わたしが前に書いた小説 「夢囲い」の容ちゃんが云う
「順子なんて去勢された犬みたい!」
施設で暮らすと云うことは 去勢された暮らしに甘んじることだ
自分に残っているはずの力も信じないことだ

そんな場所に この先何十年も自分を置く気にはなれない
わたしはもう決めたのだ
自分に残っている力で自分の人生を耕すと

電話を持ってくれたスタッフが云った
「お金がないと云っても まだ貯金はあるんやろ? いますぐ自殺未遂のころみたいって泣かんでもいいんやないと?」
それはそうだ 尤もだ
わたしはお金が圧倒的に足りないことにいっぱいいっぱいになっていて
いま悩んでも仕方ないと云うことに思い至らなかった

落ち着こう
あきらめることはできない
やれることをやるしかない

わたしはひとりだけど
折れた翼は繕っているところだ
だから きっと大丈夫

信じて 今宵は眠ろう
眠ってしまおう

2012.06.16.


[金色の液体]

心が脅えている
落ち着け 落ち着け

心が騒いでいる
鎮まれ 鎮まれ

金色の液体を飲む
金色ではないのだけど

この薬は その昔
心が触れたと信じた人から
お守り代わりに ともらったものと
同じものだ

だから 大丈夫

もう 大丈夫

とろりとした金色の液体を飲む
それは全然金色ではないし
その実とろりともしていないのだけれど

2012.05.17.


[立つ鳥]

今日でさよならの人と
うまくさよならできなくて

ぐるぐるしたので
渾身のギャグを考えて 縋っていた
曰く、「立つ鳥、後を濁しまくり」

どちらかと云うと
濁させたのは わたしだけど

いつかこのギャグを披露して
くだらないと ふたりで笑い飛ばせますように

今は こっそり祈る

2012.04.30.


[救助要請]

助けが必要です。
しにたい

ダメだ、そんなこと、云ってちゃ。
以可(いけ)ない。
わたしには夢がある。
こんなのは、きっと一瞬の感情。
耳を貸しては以可(いけ)ない。

だけど、
とても孤独で苦しい

父親からは一向にメールが届かない。
メールはわたしにとって、とても大事なツールなのに。
四肢麻痺であるわたしにとって、全部を自分でできるメールは、とても大事なツールだ。
「電話するのはスタッフに持っといてもらったり、掛けてもらわなければ以可(いけ)ないんだよ。」と電話した。
「解っとうよ、だけ?」と云われた。
判ってもらえてなさに眩暈を覚える。それを知っていて、どうしてメールをくれない?

「しにたい」と云ったら、
「そうやって、みんなを困らせるんやろ?」と云われた。

施設のスタッフに「苦しい、」と云ったら、流された。
それは当然だよねと思う。「身体」障害者支援施設なのだから。

でも、お父さんは家族なんだから、せめて、
もう少しくらい、わたしの気持ちに寄り添ってくれても良いんぢゃないか。

ダメだ、苦しい。
わたしが頑張っている現実とか、膨らんでいる夢とか、今は酷く遠い。
遠くて遠くて、見えない。
涙にかすんだ眸でわたしはディスプレイを見つめる。
必死にコトバに縋る。

誰か。誰か。電子の海の向こう岸にいる人よ。
わたしには助けが必要です。

2012.04.30.


[オビエタココロ]

トイレに閉じ込められた 一時間くらい
30分くらいはそれでも叫んだりとにていた だけど、力尽きた

「このまま、永遠に閉じ込められたら」

と思って怖かった!
安定剤を飲んだけれど震えていた
泣いた!

「シャラーップ!」
と云いたい気分だった いや、自分の心に

それが昨日のこと

そして、今日
またトイレに入っていた

外でスタッフが云っていた
「○ちゃーん、降りるよー。」

○ちゃんと云うのは入所者で
居室が一階にある わたしと○ちゃんと×さんは一緒にエレベーターに乗って
食事するフロアやトイレがある二階から降りる
だから、○ちゃんを呼ぶと云うことは 下に降りると云う意味なわけで

「また忘れられるかも知れない!」

そう思った瞬間 躰が反応した

動悸 うまく息ができない SPO2ぜったい下がっているだろうと云うような指先の痺れ 視野もなんかチカチカする

もちろん スタッフはあらかじめ○ちゃんに声を掛けただけで
わたしを置いて行ったりはしなかったし
ちゃんと迎えに来てくれた

だけど 完全にトラウマになっていて
トイレから出てきても 解決できなくて
結局 泣いたし 吐いた

ウォークマンも最近ではつけなくても眠れるようになってきていたのに
また無音が怖くなってしまった

見事にPTSDだ

スタッフに云われた
「あたしには大事な利用者なんやけ、その気持ちは受け止めるけ。」
少しは頑張れそうな気がした

それでも 不安は消えない
「わたしはまた後退したんぢゃないだろうか? せっかくいろいろなものが大丈夫になってきたと云うのに。」
躰は震えを内包して 熱っぽい

オビエタココロを抱いて わたしはいつものようにコトバに縋る
落ち着くために 自分を見つめるために
わたしはコトバを綴る

コトバを綴ることは いつでもわたしの味方
オビエタココロは晴れないけど 少しでも それでも少しでも 救われる

2012.04.25.


[呼び声]

わたしの脳髄の奧の奧の方 とてもとても遠いところから 誰かがわたしを呼ぶ
微かな痛み

それは目覚める直前まで視ていたのに もはや思い出せない夢の名残りのような
はるけき呼び声

2012.04.22.


[耕す。]

中原中也の[黄昏]と云う詩にこんな一節がある。

[黄昏]
中原中也

(前略)
――失はれたものはかへつて来ない。
なにが悲しいつたつてこれほど悲しいことはない
草の根の匂ひが静かに鼻にくる、
畑の土が石といつしよに私を見てゐる。

――竟(つひ)に私は耕やさうとは思はない!
(後略)

しかし、わたしは耕そうと思う。
自分の人生を。
自分の生活を。

外出してコンビニに行ったら、思いの外、大変だった。
車椅子で入るコンビニは狭く、
車道はガタガタ。
これを毎日買い物するのか、と思うと遠い気になった。
施設で暮らすと云うことがいかに守られているか、痛感した。

でも、そんなわたしの背中を押すのは「夢囲い」の容ちゃん。
「順子なんて去勢された犬みたい!」
これ、全然伝わらないと思うけど、わたしの中では明確な答えなのだ。

「夢囲い」と云うのはわたしが書いた小説。

わたしは耕そうと思うのだ。
自分の人生をきちんと。
自分の生活を疎かにしないで。
耕そうと思うのだ。

2012.03.03.


[shutting from the snow]

雪の中 出逢った刹那 いきなり口にした
恋 それでも優しく笑ったね

ねえ 気紛れでもいいと思っていたけれど
寄り添えるのは 冬だからなのかな

白い溜め息を固めて君に
投げ続けてる横で 雪だけが降り積もる

あの日は幸せだったよ まだ恋ぢゃなかったのにね
あんなの一瞬の揺らめき 今の痛みに較べたら
あの日に時を戻せたら もう君のことなんて想わない
そう強がってみたりするけど ほんとは抱き締めてほしい


かじかむ手 重ね合わせ 繋いだ指先は
冷えてるけれど 心はあたたかい

ねけ こうして君とふたり 一緒にいられるの
気紛れぢゃない そう云ってほしいの

降り続けてる雪を固めて
この想い込めて閉じこめてしまいたい

ねえ 君は 後悔はしてない? わたし 受け入れてくれたこと
止まない雪にも負けないで 君への想いが続いてく

すべてが奇蹟に思えるよ 出逢いの衝撃さえ越えて
奇蹟を積み重ねていって すべてを永遠にしたい

季節が過ぎ春が来ても 繋いだ手不自然になっても
ふたりの恋は消えない 一緒にどこまでも行こう

2012.01.24.


[無人島]

施設に暮らしていて、家族と切り離されて、
わたしはまるで いずこへも繋がっていかない無人島に閉じ込められているみたい

メールは悲鳴と云う名の狼煙(のろし)

本島の人は気紛れにそれに応える
わたしは悦んで、また狼煙(のろし)を上げるけれど
もはや誰にも届かない

わたしはもう大人なのに
わたしには時間もあって、わたしのことにかかりきりになれるのに、
わたしの人生をわたしが決めることはできない

家族は忙しく、それぞれの人生がある
わたしのことにはかかりきりにはなれない
なのに、わたしの人生は家族次第

わたしのことはわたしが決めたい

2010.12.01.


[墜ちてのち]

ざわざわする

施設に暮らす限り、わたしの人生は待つことだ
食事を、トイレを、ベッドに上がるのを
毎日毎日、わたしは待つ

想いは、
動かない手足に降り積もってゆく
動かない躰に降り積もってゆく

躰の奥底で、
切ない竜が声にならない叫びを上げはじめる
哀しい竜が禁じられたうたを歌いはじめる

何処にも行けない
囚われている
縛りつけられている
この地上に

1Gの軛(くびき)がわたしを地面に押しつけている
それでも
心は空を翔べると
信じられる無邪気な朝もあるけれど、
思いこめる無謀な夜もあるけれど、
今は
そのような奇蹟は酷く遠い

そんなとき、
わたしは遙かな死について考える
或いは、死ねなかった可哀想な女の子のことを考える

可哀想に
遙かな世界に旅立つ代わりに
こんなところに墜ちてしまった

2011.11.04.


[月は見てゐる]

滿たされぬ想ひを抱きて月想ふ「いつか何處かに着けますやうに」
默つてる人を窺ひわたくしを怒ってゐるの?なんて訊けない
何うしたら君はそんなに先廻りしつつ未來を悲觀してるの?
止らない涙かだんだん揩オてゆき君は溺れてしまうてせう
ねえ君よ涙の海に沈んでも月はかならず見てゐて呉れる

2011.10.27.


[涙が止まらない]

涙が止まらない

わたしは先回りして考えすぎる
先回りして涙に暮れる
こんなに動揺しやすい心を抱えて
わたしの生はそれでも続いてゆく

苦しい苦しい苦しい
痛い痛い痛い

なんでそんなことで泣いているの?
みんなが云う
莫迦莫迦しいね
くだらないね

わたしはひたすら涙に暮れている
涙が止まらない
助けてください助けてください
わたしはただ言葉を紡ぐ
わたしには言葉しかないのだ

わたしの存在にせめて意味があったら、と願う
そうだったらこの苦しみにも耐えられるのに
閉ざされたカーテン越しにわたしは見えない月を想う
月よ月よ
わたしは祈る
わたしにもいつか穏やかな夜が訪れますように

2011.10.27.


[恐ろしいこと]

わがままだと云って、施設のスタッフから
「新しい施設を探し。」と云われた。
躰が震えてしまう。

スタッフはいい。
仕事が終わればプライバシーだってプライベートタイムだってある。だけど、わたしには何もない。
施設での生活がすべてだ。
それはそれは恐ろしい。
とてもとても恐ろしい。

2011.07.02.


[不穩]

風が微温い
頬を撫でてゆく風が
微熱のときのように肌を粟立てる
不穩だ
わたしはすっかり嬉しくなってしまう

2011.06.26.


[腐乱死體]

腐乱死體のやうに甘き桃を食す
意外に彈力があり
その齒應へを愉しみながら前齒を立てる
そして廣がる豐潤な芳香

2011.06.25.


[宣言]

そんなふうにまとめないで
大人の「解釈」や
大人の「思惑」や
そう云ったものに
わたしを当てはめないで

わたしはそんな「安全」な範囲には
収まってなんてあげない
わたしもわたしの訴えも
そんなところには収まらないよ

2011.06.24.


[警告]

わたしの中に触れれば毀れてしまうものがあるとして
どうかお願い わたしに触らないで

2011.06.23.


[わたしにできること]

わたしには何の力もない
ただただ歌っているだけ
文字を綴ると云う歌

こうしているあいだにも
戦場では過酷な現実が続いている

ところで、心理学では
意識/無意識を表すのに
海に浮かんだ氷山を用いる
わたしたちの意識なんて
海面から見える氷山の一角だと云う
無意識は遥かに巨大で海面の下に隠れているのだと云う

わたしは思うのだ
氷山であるわたしたちの無意識は
共通意識と云う海に浮かんでいるのだと
その海には人類の叡智やなにかがスープのように溶けているのだ

だから、わたしと云う氷山の一部でも
歌うたびに
意識が進化すれば
無意識の海を通して
人類を進化させることができるかも知れない

だから、わたしは今日も歌う

2011.06.15.


[言葉以外のサイン]

言葉以外のサインが見えない
冗談なのかも知れない
だけど、
言葉の意味だけを受け取ってしまい
打ちのめされる

そうして
胸の中に沸き上がる嵐を
わたしはどうしたらいいだろう

2011.06.15.


[積もるもの]

お腹の中に虫がいる
いらいらの虫
いつも何気なくやっていることのリズムが狂って
いらいらが降り積もる
かさり、かさりと
軋轢が溜まっていく


2011.06.12.


[去りゆくひとへの手紙]

あなたは去ってゆく
あなたはいつでもわたしを守ってくれた。
わたしが弱っている時も
わたしが強がっている時も
わたしが過ちに落ちそうな時も
決してブレないでわたしに道を示してくれた

星の王子さまはキツネを飼い馴らした
あなたもわたしを飼い馴らした

王子さまはキツネに責任がある
わたしはあなたが去ったここに慣れることができるとは思えない
あなたもわたしに責任がある

また戻って来るから
あなたはそう云った
今のわたしにできるのは
信じることのみ
ここで生きるのみ

わたしはわたしの生活を守ろう
あなたが守ってくれたわたしの生活

さようなら
ありがとう

そして
またね

2011.05.24.


[シェーダ]

わたしはまだひとだったの そんな時代が
確かにそうあったの 微かな記憶

ひとかけらのパンを盗んで 猟銃で撃たれた
暑い夜に道端に 転がされ捨てられ
死を待った

貧しくて生きるだけで精一杯の
14年のわたしの生に意味はなかった

そこに通りかかったのは ヴァンパイアのふたり連れ
銀髮の男・ティミーと黒髪の少女・ルナ

ティモシーはわたしの血を吸い その代わりに
自分の血を流し入れてヴァンパイアにした

ひととしてのわたしには 意味はなかった
ヴァンパイアのこれからに意味はあるのか

意味を持たぬ 14年の儚き生の果て
手に入れた永久(とわ)のいのちを わたしは生きる

わたしにだって意味はあると 胸をはるため
わたしらしく これからを生きて行くのよ
2011.05.15.


[希求]

酷く哀しい
時折、酷く哀しい
時折なんてほんとうはごまかし
しょっちゅうつらい
わたしが今、話せる人には
基本的にわたしは何かを頼まなくちゃならない
本当の意味で対等に話せる人はいない

他愛なく話せる人が居ればいいのに
そうしたらわたしはすべてをなげうって
その人に相対するだろう

2010.12.24.


[一日遅れのクリスマス]

一日遅れでポインセチアが届いた
遅れてやってきたクリスマス

それはどこか切なく
子供の頃のクリスマスへの郷愁や
未だにサンタクロースを信じていることへの肩身の狭さや
そう云ったものを想い起こさせる

一日遅れのクリスマス

2010.12.26.


[エロティックな夢]

エロティックな夢を視た
経験がないほど気持ちいい夢
細かいことは覚えてないけれど
エロティックな夢を視た

2010.12.01.




[月の歪み]

表に出て月を見上げたら
視界の中で月が歪んでいて
それはわたしの弱さや歪みを投影しているようで
赦されているようだ

2010.11.20.