ミカヅキカゲリプレゼンツ

孵化以前ことば 其の参



古いものほど、下にあります。まるで地層のように。

ページを分けています。
孵化以前ことば其の壱
孵化以前ことば其の弐






[飼い馴らす]

星の王子さまはキツネを
「飼い馴ら」した

そう云う意味で
わたしはいろんな介助者に
「飼い馴ら」されていると思う

仮令(たととえ)ば
洗髪のし方

仮令(たととえ)ば
お茶の飲ませ方

介助者には
それぞれれにやりかたがあって
わたしは寧ろ悦んで
それを享受する

ほんとならば
わたしのやり方に
どの介助者にも合わせてもらうのが
善いのだと思う

でも
介助者によってさまざまなやり方は
わたしとそのひととの関係性の中で生まれたものだから
貴重な気がして
放置し甘受してしまうのだ

わたしはまったく
いろんな介助者に
「飼い馴ら」されていると思う
それは何処か心地よい感覚でもあって

ところで
介助者のひとりとうまく馴染めないことを
最近のわたしは思い悩んでいた

性格的に合わないのかな
どうすれば善いのかな

だけど
昨日そのひとが長く入っていて
昨日は暑い中外出したから
体温調節ができないわたしはすっかりまいっていて
帰ってきてから
ドライを入れる→お茶を飲む→トイレに行く→お茶を飲む→アイスノンを当てる→霧吹きをする→お茶を飲む→ドライを消す→トイレに行く→ドライを入れる(以下繰り返し)
みたいなことをずっとやっていた

それはかなり面倒臭くて大変だったと思うけど
そのひとはそのすべてに応えて呉れた
そのすべてを叶えて呉れた
凄く善い感じだった

その間わたしはずっと
パソコンに向かって原稿をやっていた
なかなか終わらずずっとやっていた
やっと終わってうれしくて
「終わったー」と叫んだところ
そのひとは拍手を呉れた
重ねてわたしは云う
「出かけます」
「出かけますか? あたしは財布だけ、持って行ったら善いですね」
時刻は22時をまわっていたのに
気軽に応じて呉れたのが
酷くうれしかった

嗚呼
わたしは思う
すこしこのひとに
「飼い馴ら」されてしまったかも知れない
それは何処となくこそばゆさを伴う感覚で

出かけながらもいろんな話をする
そのひとは云う
わたしの手元の電動車椅子の電源ランプを見ながら
「手元の青が綺麗ですね」

嗚呼
またわたしは思う
またひとつこのひとに
「飼い馴ら」されてしまったかも知れない

「飼い馴ら」されると云うのが
判りにくければ
「惹かれる」と云い換えてしまっても構わないと思う

そんな煌めくみたいな
「飼い馴ら」される瞬間が
たくさん昨日はあって

やって行けそう
わたしは安堵する
きっとだいじょうぶ

こうやって介助者に
「飼い馴ら」されながら
今日もわたしの暮らしはまわっている

2014.07.19.


[わたしのデビュー作になるかも知れない小説]

わたしのデビュー作になるかも知れない小説が
書き上がった。

とてもうれしい。
かなり誇らしい。

小説で印税契約をしましょうと
云ってくれるところが現れたのだ。

うふふふふふ。
わたしもこれで 新人作家。

今までは
「たまご」を名乗ってきた。
「物書きのたまご」。

だけど、
「わたしのデビュー作になるかも知れない小説」が
でき上がった。

魂をこめて、
持てるもののすべてを費やして、
書き終えた。

リヒャルドと云う少年の
センシティブな内面世界。
センシティブな自意識。

書ききった、
と思う。

これが通用しないなら、
アプローチを変えてみることを
考えなければならない。

今は結果待ち。
出版できるか否か。
編集者のチェックが入って、
売れると判断されれば
出版されるのだ。

できるだけのことはやった。

殺すのなら、
早く殺してくれ
と云う心境。

2014.06.20.


[コンソメ☆パンチ]

挫けそうになってた

もう頑張れない
もうミーティングにも自立生活センターにも行かないで
引きこもって ニートになってしまおうか

そう思いながら 病院から帰ってきて
月曜日恒例の○○(介助者の名前)おやつタイムを執り行った

そうして、コンソメパンチを食したら
感動的においしかった

もう少し
頑張ってみよう
そう思った

コンソメパンチのパンチは
ほんとうにパンチなのだな
そう感じた

建てなおせたのがうれしすぎたから
Gさん(自立生活センターの人)に電話を掛ける
「もう少し頑張ろうと思います!」
開口一番 そう宣言したら、
Gさん(自立生活センターの人)は戸惑っていた
「ああ。そう。何か判らんけど、善かったね、」
と云って

無理もない
ぐふふふふ、と思う

まだだいじょうぶ
コンソメパンチのパンチが
ついている

わたしはやってゆける。

2014.05.12.


[なんだか頑張れない。]

「顔が濡れて、力が出ないー。」
アンパンマンが云う。
わたしは顔など濡れていないのに、なんだか力が出なくて、困っている。
頑張ろうと思うのに、頑張れないで、弱っている。

助けて、と内心だけで繰り返し、パソコンに向かう。
何をするわけでもないけれど、とりあえず、パソコンに向かっている。
時間ばかりが、徒に過ぎて行く。
自己嫌悪ばかりが、徒に降り積もって行く。

まだ障害を負う前、
わたしは東京にあって、すべてに行き詰まっていた。
助けてくれる人もいなくて、苦しかった。

今、わたしはひとり暮らしをはじめた。
昔とは、違う。
相談できる人もいる。
昔とは、違う。

そう思うのに、そして、それはたしかなことなのに、
信じられない夜がある。

今、こうしてわたしが歩んでいることの、果てしなさが、
耐えきれない夜がある。

助けて、と内心だけで繰り返している。

わたしの中には、
もう遂(とう)に、絶望が巣食っていて、
普段は意識しないようにしているのだけど、
噴出する夜があるのだ。

助けて、と心の中だけで云う。
叫ぶ。

たぶん、「内心だけ」なのが以可(いけ)ない。
孤独に苛まれている。

語り合えるひとでもいれば、きっと違ったのに。
死んでしまった友達を想ってしまう。
余計に追いつめられる。

助けて、
助けて、
誰か。
誰か。

こんなことを何時(いつ)まで書き綴って行ったところで、
何処にも辿り着くことができないと思う。

わたしが歩んで行くことにも、
意味があるのだと、
信じさせてくれる誰かがいたなら。

否。
結局、自分で何とかするしかない。
判っている。

でも、「ひとりではさびしすぎる」のだ。
これは、萩尾望都『ポーの一族』のエドガーのセリフ。
仮令(たとえ)ば、これを判ってくれる誰かが、
わたしには必要。

たしかなこと。
わたしは遂(とう)に絶望していて、
それでも、生きて行くと云うこと。
歩んで行くと云うこと。

それさえ、決めているなら、
だいじょうぶ。

アンパンマンが終(しま)いには、新しい顔を手に入れるように、
わたしだって、やって行けるはず。

力が出ない、
そんな夜があっても。

昔とは違う、
それは、たしかなこと、なのだから。

だいじょうぶ。

2014.04.13.


[あるまじきこと。]

指示を無視された。

あなたが障害者だったと考えてみてほしい。
指示を出して、やってもらうことでしか、生きて行けないのだと思ってみてほしい。

指示を出すまで内心でどのくらいのハードルを感じるか。

そうやって、やっと出した指示を無視された時、すぐには云い募れないことを想像してみてほしい。

指示を無視した人に、「なんで無視したのですか?」と訊いた。
「無視するつもりはありませんでした。覚醒してるかを見極めていました。」

それならば、何故、確認しに来ない?

指示を無視するなんて、あるまじきことだ。
わたしがどのくらい、心を冷やしたか、想像してみてほしい。

2014.03.27.


[助けてほしかった]

自殺未遂の前のことを、当時からの友達と振り返る機会を持った。

+++
当時は、誰も、同期も、先生たちも、すいのおかれている状況に踏み込んでいかなかった。
そうじゃない?
いろんな要素考えて、仕方なかったことだったのかもしれないと思う反面、やはりもっと何か出来たんじゃないかって思うのだ。
だけど、これはわたしのたわごとだね。
+++

云われて、わたしの内奥には、ふつり、ふつり、ある気持ちが産声をあげる。

わたしは答えた。
+++
うん、欲を云えば、助けてくれていたら善かったのになって、思わないでもない。
まあ、これは、今はじめて、言語化して気づいて、自分でも吃驚したけれどねー。
+++

そう。吃驚したけれど気づいてしまった。
わたしは
助けてほしかった
のだ。

助かったばかりのころ、思っていた。
「助かりたくなかった」

だけど、たぶん、逆。
「こうなる前に、助けてほしかった」

ふつり、ふつり。
気づいてしまった思いが、わたしを蝕む。
誰をも、恨みたくなんかないのに。
恨みたくなんかないのに。

わたしは発達障害だったから、誰とも、助けてもらえるような関係は築けていなかったと云うことなのだろう。
仕方ないことだ。

嘘。
そんなに聞き分け良くなれない。
助けてほしかった。

混乱して、整理できなくて、一日、経って、介助者に縋る。
話を聞いてもらって、話を聞いて、ようやく、なにごとか、見えてきた。

1.友達は何故、今になって、そんなことを云ったのか?

2.そのときに助けてもらえていたとして、結果は違ったのか?

3.それで結局、わたしは何を選ぶのか?

自殺未遂も四肢麻痺も、わたしには必然だったと思っている。
のだとしたら、今更、何を混乱することがあろう。

わたしは生きて行く。
ほら、こんなに苦しい。
こんなにも苦しい、わたし生(せい)。

その足掻きこそが、めぐりめぐって誰かの栄養になるかも知れない。
誰かの勇気になれるかも知れない。

わたしが目指しているのは、そんな足掻き、
そんな革命だった。

何を今更、立ち止まる必要があろう。

こんなに苦しい。
こんなに苦しい。

望むところだ。

2014.02.11.


[内的怪獣。]

内側にわたしは怪獣を飼っている
哀しきゴジラ
怪獣はわたしの内側を喰らい わたしはみるみるうちに【クウドウ】になる
がおお 哀しい

史桜ちゃんと云う親友がいた
わたしは今でも親友だと思っているのだけど 史桜ちゃんは最近そう思ってくれていないみたいだ
メールをくれない
夏休みだからとかわたしのひとり暮らしが一周年だったとわたしがメールを出したからとか云った理由で 思い出したようにメールをくれる
わたしは なのにいそいそと返事をしてしまう それに対する返事なんか
来ないと判っているのに

最近ラインでまたしばらく頻繁にやりとりがあって わたしは悦んでいたのだけど
それもまた途切れてしまった

内的怪獣が火を吹く
がおお がるるるる

こんな夜は 何もかもが哀しい
介助者がリフトを扱う手つきとか
普段は大好きなはずのお風呂のあたたかさだとかでさえ
わたしを蝕む

内的怪獣がわたしを喰らう

離れて行ってしまう人がいるのは仕方ないことだ
受け入れるべきなのかも知れない

だけど つらい
あきらめきれない

わたしは前に進まなければ

2014.02.07.


[やさしい気遣い]

ある人がこわかった。
その人は無言で無表情なのだ。

わたしは発達障害なので、ただでさえ、人の内面を慮ることが苦手だ。読み解けなくて、いつも不安だ。
その上に、無言で無表情なのだ。
読み解けなすぎて、だんだん追いつめられて行く。どんどんパニックになって行く。

わたしがいつも考える問題として、浸透圧の問題がある。
わたしの内側と外側を隔てる膜を感じるのだ。
きゅうりに塩をすると水分が出るように、内側と外側が浸透圧で等しくなろうとして、わたしの内側が外側に流れ出して行くように、逆に外側が内側に流れ込んでくるように、感じてしまう。

自分の境目が危うくなるような気がするのだ。

その人との時間、それが酷くなる。
自分の表面がチリチリするように感じる。動悸がして、落ち着かず、死にたくなってしまう。
それならば、自分から話しかければいいのにと云われるかも知れないけれど、不安になってしまっている状態のわたしには、できないのだ。苦痛でならない。

それを訴えて、その人と話し合いを持った。
一応、判ってくれたみたいだった。

だから、今までのように、付き合って行くことにした。
それから、二度、その人に逢った。

確かにこわい。そんなに、急には変わらないと思うから。
でも、探り探り、やって行っている感じ。

「やさしい気遣い」がそこにはあって、心が和む。

「昨日、ジブリ展に行ってきたんですよ。」
近頃ではついぞなかったことだが、今日、その人の方から話しかけてくれた。
「やさしい気遣い」を感じさせる穏やかなトーンだった。

宝物をもらったみたいに、うれしい。

だいじょうぶ。わたしたち、きっとやって行ける。

明日から、わたしの2014が本格的にはじまる。
予定が詰まっていて、考えると少しこわい。
でも、もらった宝物を胸にして、歩いて行こう。
芯にも灯(あか)りにもして。

2014.01.05.


[こわい]

ある人がとてもこわい。
仮令(たとえ)ば、わたしが湯に浸かるときに、お茶のボトルを差し出す女の腕の産毛が。
仮令(たとえ)ば、なにやら女を感じさせる荒い息遣いやそのひとの口臭なんかが。

なにゆえ、こわいのだろう。

わたしは発達障害だ。
ただでさえ、人の内面が読み取れない。

その上に、その人は、無言で無表情なのだ。
発達障害的には、無言で無表情なのは、読み取れなすぎて、こわい。

今も隣りの部屋にいる人の気配に脅かされながら、
わたしは言葉を紡ぐ。

心痛(ハートエイク)が激しい。
その人が来る時に、安定剤(頓服)を飲んだのだけど、効いてくれない。
用事がある時だけ、わたしはその人に向き合う。
とてもこわくてとてもつらい。

あと、10時間。

2013.12.27.


[豊かなる電気毛布。]

電気毛布を贖(あがな)えり。
ただ、それだけなのだけど。

電気毛布を贖(あがな)えり。

あったかい。
ぽかぽかして、容易く「仕合わせ」になれた。
・大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋(俵万智『サラダ記念日』)
と云う短歌を思い出した。
本歌取りをしてみるなら、こう。
・あたたかければいよいよ豊かなる気持ちぽかぽかしてる電気毛布は
電気毛布は人に薦められた、
躰(からだ)が温まらないと嘆いたら。
なるほど、ナイスアイディアだ、と
わたしは思い、
返信にこう書き送った。
電気毛布は善いかも知れませんね。
12月の予算に組み込んでみよう!
それなのに。
嗚呼、なのに、だ。
わたくしは懺悔しなければならない。

待てなかった。
態々(わざわざ)、通帳から現金を卸してまで、
我、電気毛布を贖(あがな)えり。

懺悔します。
我、電気毛布を贖(あがな)えり。

電気毛布を贖(あがな)えり。

そのことが
ただ、それだけのことが
もたらす、即物的なまでの、享楽を
何としよう。
何としよう。

電気毛布を贖(あがな)えり。

2013.11.23.


[「ジョニーは戦場へ行ったって感じじゃないかなあ。」]

 最近、落ち込んでいると云ったら、友達が大変に心配してくれて、「介助者A、介助者Bとかで近況説明してくれない?」と書いてきた。
 落ち込んでいるから、説明もなかなかできなかったのだけど、せっかく心配してくれているのだから応えなきゃなーと思って、頑張って書いて、送った。その返事が届いたのだけど、凄く失望させられた。

 【あんまり思い詰めて書いてると自分がかわいそうになってこない?感情的に書きすぎると「ああ、ミカヅキさんは今状態が悪いんだわ、この手紙もだいぶ被害妄想入ってるわね、ただ同情してほしいだけなんでしょうね。」って処理されそうだし。
 わたしはそうは思ってないにしても事実って。やっぱあるじゃん。今はこうやってメールとかで言葉を発せなくても心情を伝えられたりもするけどそうじゃなかったらやっぱジョニーは戦場へ行ったって感じじゃないかなあ。】

 訳が判らないと思った。「ジョニーは戦場へ行った」も判らないし。
 調べてみた。調べてみたけれど、やっぱり訳が判らない。
 「ジョニーは戦場へ行った」は、旧い映画で、【ジョニーが戦場へ行き、すべての感覚と両手・両脚を喪う。意識だけになったジョニーは、意思を伝えようと、わずかに動く頸(くび)でモールス信号を送るけれど、ジョニーに意識があると信じない医師や看護師は痙攣だと思い、薬を投与し、消してしまう。】と云うものだった。

 は? 何、云ってるの? 訳が判らないよ! と云えればいいけど、わたし例のように何も云えない。ただ、深くショックを受けて、熱を出す。

 相変わらず心身相関が強くて困ったことだ。

 前にも、違和感を覚えたことがあった。
 介助者に話が通じないと云った時に、
「あー、そういうことか。そりゃ仕方ないよ。頭良かったらもっといい学校行っていい会社いって出世してるんじゃないの?介助なんてやってる人にエリートはいないのさ!仕事選べなかっただけ。キツイし儲からないし文句言われるし割に合わないんだからぞんざいな態度にもなるさ。気の利いた会話も出来ないさ。そんな事奴等に期待しちゃダメなのさ。」と云われたのだ。
 確かにわたしと介助者とのあいだには、教育格差のようなものがあって、わたしが持ち出す話題に介助者はたいていついて行けない。「シュレーディンガーの猫」とか、「サリーとアンのテスト」とか。

 【シュレーディンガーの猫。
 1.箱と猫を用意する。
 2.箱に放射性物質(ラジウムなど)を入れる
 3.放射性物質は完全にランダムにアルファ崩壊し、その際放出した放射線を検出する装置(ガイガーカウンター)と青酸ガス発生装置を入れる。
 4.検出装置は青酸ガス発生装置とつながっており、もし放射性物質がアルファ崩壊した場合青酸ガスが発生し、猫は死ぬ。
 5.猫を入れ、蓋を閉め中を観測できないようにする。
 6.この実験の場合、猫の生死は放射性物質のミクロな振る舞い(アルファ崩壊)にのみ決定すると仮定する。
 7.さて、一定時間経過したら箱の中の猫は死んでいるのか生きているのかどっち?】

【サリーとアンのテスト。
 1.サリーは、カゴと玉を持っています。
 2.アンは、箱を持っています。
 サリーは、持っていた玉をカゴの中に入れて、部屋を出ます。
 3.アンは、その玉をカゴから出し、自分の箱に入れます。
 4.箱を置いて、アンは部屋を出ます。
 5.そこへ、サリーが帰って来ました。
 6.さて、サリーは、玉を出そうとしてどこを探すでしょうか?】

 でも、説明すると、意外な反応が返ってきたりする。「猫の生死は気配で判りませんかね。振ってみるとか。」
 それに、経験ではとうてい敵わない。教育格差が、だから、あったとしても、切り捨てようとは思わない。
 「確かにあたし、頭、悪いけど、その代わり、人にできないことができますからね。」介助者が云い、まったくその通りだとわたしも思う。

 恋人に別れ話をした時にも、反応が微妙だった。
 「こっちから云ってやること、ないよ。だって自分から別れを切り出したら、障がい者を見捨てるなんて何て酷いやつ!てレッテル貼られるじゃん?」

 彼女にとって、わたしが障害者だと云うことが重大なのだろう。
 そう云うことなのだと思う。哀しいことだけど、彼女と対等に友達付き合いはできないのだろう。

 「あきらめても良いものかな?」
 Gさん(自立生活センターの人)にわたしは訊いた。「あきらめると云うことでもないと思うよ。」Gさん(自立生活センターの人)は云う。「カゲリはどうしたい?」
 わたし? 書きたい。

 わたしは「鉱山のカナリア」になろう。自分が感じる、「違和感の気泡」を大事にしよう。気付いたことは、世に問うていこう。

 月末〆切の新人賞に向けて、今のわたしのことを書くのだ。あまたの人に向けて、今のわたしのことを書こう。
 とても苦しいけれど、世の中に届くならば。

 それが、わたしの革命。

2013.10.27.


[介助者との顛末――火星を想う――]

・頼りない生殺与奪握られた存在でいる介助者の前

・体調は機嫌はどうか 入浴は頼めるかな と見極めている

・入浴を拒みその後もきつそうできょうもだめかな覗う様子

・試みに頼んでみたら意外にも肩透かし的「はい」との返事

・頼んでみないわたしの方が悪いのだとでも云うよう 咳込み方が

・けれどなお苦しそうなる介助者にやめてくれって思ったりする

・巧妙に頼むことすらできないと思わされていたのだと気づく

・わたくしが暮らすためには介助者が不可欠であるゆえ火星を想う

・介助者と暮らすこととは隔たった火星を想うことだと思う

・車椅子バスに乗るとき運転手迷惑顔でスロープを出す

・車椅子、赤いフレーム押さえてる力瘤(ちからこぶ)とか尊い車中

・もうあまり残ってないの望みなど動くことすら望んでいない

・こうなってわたしに何ができるのか熱ある躰(からだ)もて余しつつ

2013.10.24.


[レッテル。]

恋人に別れ話をした。
すっきりしたのだけど、友達に報告したら、反応が微妙だった。

「こっちから云ってやること、ないよ。」
彼女は云う。

「だって自分から別れを切り出したら、障がい者を見捨てるなんて何て酷いやつ!てレッテル貼られるじゃん?」
だから、相手は云わないのだよ。

えー。
わたしは腑に落ちない。
わたしから振ったのに、なんでー?

しばらく考えてみて、判った。
彼女にとって、わたしが障害者だと云うことが重大なのだ。

哀しくなった。
わたしはひとりの人間として、恋人とつき合い、別れたつもりだった。
彼女とも、ひとりの人間として、友達だと思ってきた。

でも、わたしの考えすぎでなければ、それは幻想だったと云うことになる。
差別の萌芽がそこには潜んでいる。

レッテルを貼っているのは誰か?
彼女の方だ。

レッテルを貼られるよ、と親切に云うことが、 わたしにレッテルを貼る行為なのだ。

障害者になって、善かったと思っている。
普段は。
だけど、今は酷く哀しい。

でも。
それでも。
わたしは自分を宥める。
わたしは「鉱山のカナリア」になろう。
自分が感じる、「違和感の気泡」を大事にしよう。
気付いたことは、世に問うていこう。

この脆弱な躰(からだ)と心を抱えて、生きて行く意味は、
きっとその程度しかない。

2013.08.31.